おすすめ本紹介『彼女は一人で歩くのか』ネタバレなし
『すべてがFになる』の作者が描くSF小説
『彼女は一人で歩くのか』 森 博詞 作 講談社タイガ
AI技術の進化した未来を生き、人とAIが同じ姿で共存している世界。
医学が進歩し、人類は臓器を交換することで100年以上生き続けることができる。
病気や疾患も臓器を交換することで簡単に克服できる。
そのため「死」という概念が遥か遠くへいってしまうような感覚の世界だ。
技術も進歩し、人間そっくりにできたウォーカロン(AI)が普及したため、人間は基本的な労働という概念からは解放されている。
主人公のハギリは、研究者である。
ハギリの研究テーマは「人とウォーカロン(AI型人間)の境はどこにあるのか」を探るものだ。
ハギリは、一定程度の情報をもとにすれば、人とウォーカロンを見分けることができる知識と技術を持っている。
通常、ウォーカロンとよばれるAIは人間と区別がつかない見た目をしており、会話もスムーズに行うことができる。
ウォーカロンはいかにもAI的な回答をすることがないように設計されているし、人間らしいスピードとテンポで会話ができるよう考えるしぐさや時間もまさに人間そっくりに行う。
さらにウォーカロンは、食事も排便も行う。
肉体や臓器や細胞は人間も取り入れている人工的なもので、思考回路はAIだからだ。
そのため、ハギリのような専門的な知識がなければ、普段生活しているなかでウォーカロンか人間かを判断することは非常に難しいのだ。
ハギリは、自身のもつ専門的な知識を具現化し、実用できる端末を作る途中であった。
この端末が普及すれば、人間とウォーカロンとを見分けることが誰でもできるようになる。それに加え、さらにこの分野の研究が進めば、人間を人間たらしめるものはなにかという究極の結論を人類は手にする。
物語は、ハギリの研究室に見知らぬ一人の女性が訪れるところから始まる・・・。